栄養療法 NUTRITION THERAPY

栄養療法とは

体に生じる様々な不調の原因として、最近では血管の老化が注目されています。なぜ血管は老化するのでしょうか?それは、食事やライフスタイルなどによって、体の酸化・糖化が進むからと言われています。いくら血液の状態を改善しても、血管がボロボロになると、体に十分な栄養は行き届きません。そこで酸化や糖化の発生するメカニズムに着目し、血管の老化を根本から予防する栄養療法が必要になってきます。当院の栄養療法は、腸内環境を整えてくれる「バクテリアセラピー」や酸化・糖化(AGEの発生)を抑える「食事指導」を行うのが特徴です。栄養療法が必要な人は大勢いらっしゃいます。ただ、無理に勧めることはありません。お口の中を拝見し、患者さんのお悩みを伺い、栄養療法が必要だと判断した場合にご提案します。「お口の健康から体の健康を、体の健康からお口の健康へ」。血管の老化を防ぐことで、歯科疾患を根本的に改善していくのが当院の栄養療法のコンセプトです。

歯医者が栄養療法を
取り入れる理由

歯科医師 吉岡 努

虫歯や歯周病の予防・治療に関して、今まではご自宅でブラッシングを丁寧に行ったり、歯垢や歯石を定期的に取り除いたりする方法が一般的でした。しかし、そのようにお口の中の掃除を頑張っている方でも、なかなか症状が改善しないケースが見受けられます。なぜなら、体の酸化・糖化が生じやすい生活習慣を続けている方は、血管の老化も進み、歯周組織に栄養がまわらなくなるからです。結果的に、歯周病菌への抵抗力が弱まります。つまり、血糖値が少し高い、強いストレスに晒されている、飲酒癖がある方などは、通常の歯科治療だけだと歯周病の進行を抑えられない可能性があるのです。ぜひ栄養療法を行い、血管の老化を遅らせて、歯周病菌に対する抵抗力を高めていきましょう。

あなたの食生活、乱れていませんか?

  • 忙しいので規則正しく食事をできていない
  • 甘い飲み物がとても好きである
  • ファストフードばかり食べてしまう
  • 毎日の食事をコンビニで買うことが多い
  • 間食や夜食をついついしてしまう
  • 好き嫌いがとても多い

乱れた食生活は、お口の健康に影響を及ぼします。
虫歯や歯周病から守るために、体の内側から健康な身体を作りましょう。

食事と疾患の関係性

お口の健康は体の健康にも関係してきます。栄養療法を続けると、血管がもろくなるのを防ぐ効果が期待できます。
結果的に、全身の様々の病気を防ぎ、口腔内の状態を改善する効果も見込めるのです。

  • 全身の疾患

    近年、歯周病菌が全身に悪影響を及ぼすことが明らかになってきました。歯周病菌が血糖値を上げたり、動脈硬化の原因になったり、認知症の原因になったりと様々な全身疾患に関係してきます。また周産期の患者さんの場合、口の中の状態が悪いと、早産の可能性を高めると言われています。これは歯周病菌が陣痛促進剤と同じ働きをしてしまうためです。当院は歯科を専門としているので、体の病気そのものを直接治すことは目的としません。しかし、酸化や糖化を防ぐ栄養療法をもとに、口と体の双方にアプローチすることで、結果的に体の健康を維持する効果が期待できます。

  • お口の疾患

    歯周病、口腔がん、腫瘍などは歯周組織の健康と密接に結びついてきます。免疫細胞は、血液を通じて歯周組織に送られます。つまり、血管の状態が良くないと、栄養や酸素が届きにくくなり、免疫機能が適切に働かないわけです。また、酸化や糖化が続くと、骨密度が少なかったり、骨と骨をつないでいる結合組織が弱いままだったりします。すると抜歯やインプラントなどを行った後、抜歯した箇所がなかなか治らなかったり、骨が露出したりするリスクを高めてしまうのです。これらのケースにおいても、栄養療法を取り入れて、適度な運動を続ければ根本的な予防・改善が期待できます。

バクテリアセラピー

バクテリアセラピーとは

バクテリアセラピーは、善玉菌(ロイテリ菌)を摂取することで体質改善を行う方法です。 ロイテリ菌は、もともと人間に由来する善玉菌で、ノーベル生理学・医学賞選定機関であるスウェーデンのカロリンスカ医科大学で1990年代から研究が続けられてきた乳酸菌の仲間です。
バクテリアセラピーは副作用のリスクがなく、体に優しい治療法です。通常の歯科治療やメインテナンスに加えて、善玉菌を摂取することで、お口と全身の健康が期待できます。

バクテリアセラピーの流れ

  1. Step01

    プロバイオティクスを選ぶ

    プロバイオティクスとは善玉菌の総称で、コレステロール低減やアレルギー改善、免疫機能改による感染症防止効果などがあります。善玉菌にはいろいろな特徴があるので、自分にあった善玉菌を摂ることが大切です。

  2. Step02

    体内で善玉菌を育てる

    ストレスや乱れた生活習慣・食生活では、善玉菌が生息しにくい体になってしまいます。生活習慣の改善と合わせて、定期的に善玉菌を補給し、体内で菌を育て「育菌習慣」を身に付けることが大切です。

  3. Step03

    菌質改善で体質改善

    善玉菌は免疫力を高めることから、自然の抵抗力維持に役立っています。また、腸内細菌の改善にも効果的です。菌質改善を行なうことで健康維持の基礎となる免疫力を高めましょう。

菌質とは?

菌質は菌の種類のバランスです。菌は体内に約500兆個以上共生しており、重さにして約2kgになります。
肝臓の重さが11kgと考えると、菌も1つの臓器としてとらえられます。バクテリアセラピーを通して菌質をコントロールしていくことで、体が元気になっていくのです。

当院ではロイテリ菌をおすすめしています

一口に「善玉菌」と言っても多数の種類があります。当院ではロイテリ菌のサプリメントである「L:rプロデンティス」を使用してバクテリアセラピーを行っています。ロイテリ菌は口腔環境を良好に保つことから、歯肉の健康の維持に繋がります。

ロイテリ菌

酸化・糖化・AGEを食事栄養バランスでコントロール

毎日の食事や生活によって、私たちの体は酸化や糖化が進行していきます。
酸化や糖化が進行することで、体やお口の不調を引き起こしてしまうため、毎日の食事栄養バランスを見直すことが大切です。

体の酸化とは

人間は、空気を吸って生活しています。空気の21%は酸素です。酸素は体の中で栄養と結びつき、エネルギーを作る際に大量の活性酸素が出来ます。これは「体がさび付いた状態」であり、一度酸化が起きるとどんどん連鎖反応で進んでしまいます。
しかし、この酸化は生きるための宿命です。さび付くことで体の中の機能が正常に動かなくなるため、活性酸素を取り除くための生活習慣(バランスの良い栄養を取る、食品添加物を避ける、喫煙をやめる等)に直す必要があります。

活性酸化による体の障害

コレステロールや中性脂肪などの歯質が酸化して過酸化脂質となり、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病の悪化の原因にもなります。また、肝機能の低下、発がん、血管障害、白内障、腎障害、アルツハイマー病、老化の促進、短命、皮膚のシミを濃くする原因ともなります。

抗酸化物質の摂取について

  • ファイトケミカル(フィトケミカル)

    植物が紫外線の害や虫などから、自らを守るために作りだした物質です。植物の皮の周りに多く存在しており、野菜を丸ごと、皮ごと食べることで、抗酸化作用を促します。

    効果のある食材:玉ねぎの皮ごと、リンゴの皮、ニンジンの皮、ゴボウの皮、大根の皮

  • カロテノイド(カロチノイド)

    緑黄色野菜や果物に含まれており、抗酸化作用によって活性酸素から体を守ります。ガンや生活習慣病の抑制、美肌効果、シミ予防、目の健康維持に繋がります。

    • βカロテン:人参、春菊、ほうれん草、小松菜
    • αカロテン:人参、カボチャ
    • リコピン:トマト、スイカ、ピンクグレープフルーツ等の赤い色素
    • ルティン:ケール、ほうれん草、ブロッコリー、キャベツ、さやいんげん
    • アスタキサンチン:サケ、イクラ、カニなどの魚肉の赤色の身や海藻
  • ポリフェノールフラボノイド

    植物が光合成に行うときにできる物質です。植物自身が生きるために持っている物質で、人間の体内に入っても抗酸化作用として有効な働きをします。悪玉のLDLコレステロールの酸化を阻害する効果もあります。

    • カテキン:お茶の渋み成分(緑茶、ほうじちゃ、番茶、レンコン)
    • 大豆サポニン:大豆、納豆、おから
    • アントシアニン:青や紫系の色素成分(ブルーベリー、カシス)
    • カカオマスポリフェノール:チョコレート、ココア
    • クルクミン:ウコン、カレー粉
    • ショウガオール:生姜の辛味成分
    • フラボノイド:緑茶、そば、玉ねぎ、大豆、ブルーベリー、ブドウ
  • 硫黄化合物

    ニンニク、玉ねぎなどのユリ科の野菜、大根やワサビなどのアブラナ科の野菜に含まれる辛味成分です。抗酸化作用を発揮し、血栓を溶解、血行をよくして血液をサラサラにします。食中毒を防ぐ効果もあります。

    • アリシン:ニンニク特有の刺激臭の素となる成分(ビタミンB1と一緒に摂取するとさらに効果的)
    • イソチオシアナート:大根おろし、ニンニク、キャベツ、ワサビ、からし
  • ペルオキシダーゼ

    唾液、大根、ゴボウなどに含まれる抗酸化酸素です。よく噛んで食べることでペルオキシダーゼが含まれる唾液が沢山分泌されます。

体の糖化とは

錆びである酸化に対して、糖化とは「焦げ」を意味します。これは「メイラード反応」言われ、糖とタンパク質を含む食品を加熱調理すると、色が黄色や褐色に変化して風味が変わる現象です。
高血糖状態が続くとヘモグロビンAlc値が高くなり、老化物質であるAGEを生み出す前の状態となります。ヘモグロビンAlcが長時間高血糖値の状態でいると、AGE(老化物質)へ変化します。
体が糖化されると糖尿病リスクが上がり、AGE(老化物質)が増えることで血管の柔軟性が失われ、内臓肥満へと繋がります。早く血統値を下げることが何よりも大切です。

AGE(老化物質)を食事栄養バランスで整えましょう

AGEとは、ヘモグロビン(赤血球)に糖がベタベタにくっついている「終末糖化物質」です。
体内にどんどん蓄積されて細胞を攻撃したり、組織を劣化させ老化を加速する原因となります。
高血糖による糖尿病が、口腔内の歯周病を悪化させる原因となりますので、早く血糖値を下げることが何よりも大切です。

「当院では食事栄養バランスのサポートを行い、お口と全身の健康を維持するご提案を行っています。

AGE(老化物質)が発生される状態とは

  • 電子レンジで2、3度加熱した食品
  • マヨネーズが酸化して変色した部分
  • 電子レンジで10分以上加熱した食品
  • 空気や紫外線にさらされる中で保存された食品(長期保存された干物など)
  • 揚げ物、あるいは揚げなおした食品
  • レトルト加工され、長期間保存された食品
  • 肉や魚の焦げた部分

AGE(老化物質)を下げる工夫

AGE(老化物質)は、同じ食材でも調理方法によってAGE量が大きく異なります。AGEが少ない食材と調理法を選択することで、血糖値を下げることができます。

牛肉の場合

  • 生…707
  • ステーキ(レア)…800
  • ステーキ(ミディアム)…1006
  • 直火焼き…7497

当院での食事指導

体の健康は日々の食生活で変化します

酸化や糖化を予防するために、当院では食事指導を行っています。食事指導と言っても、糖質制限や特殊なダイエットをするわけではありません。糖質制限も極端なダイエットも長い目で見ると、体にとって様々な悪影響を及ぼすからです。当院の食事指導は「何かを制限する」よりも、糖化・酸化を防ぐ食事を、バランス良く摂取することに焦点を当てています。体の健康は食事の内容が決め手になります。食べ物以外で健康を維持できることは、ほとんどありません。体の中の部品が悪いのに、健康を保てるわけがないからです。ジュースや脂っこいものを食べたり、お酒を毎日飲んだりすれば、体を作っている部品も必然的に悪くなります。単純なことですが、悪い生活習慣を見直し、無理なく体に良い食事を取り続ければ、様々な不調が改善する可能性が高まります。

酸化・糖化(AGEの発生)を防ぐ食事や食べ方をアドバイス

「日々どれぐらいお酒を飲んでいるか」「喫煙習慣があるか」「家事や仕事などで強いストレスがかかっているか」などは、患者さんの顔色や歯茎の状況を見ればおおよそ判断できます。もしトラブルが起こっている場合、抗酸化物質のある食べ物を摂取したり、調理の仕方にも気をつけたりして酸化や糖化を防がなければいけません。特に余分な糖と結びついて生じるAGE(糖化最終生成物)を少なくするには、なるべく火を通さず、生で食べたり、茹でたり、蒸したりする日本料理が適しています。あとは食べ物を食べる順序も大切です。まず野菜やタンパク質を食べてから糖質へ。簡単に言うと、ご飯を食べる前に野菜を摂ることで、血糖値が上がりにくくなります。このように一人ひとりの状況に応じて、どんな栄養素を取ればよいのか、どんなメニューが適しているのかのアドバイスをできるのが当院の強みです。特製の資料もお渡しするので、家に帰ってから少しずつ酸化や糖化を防ぐ食事・調理方法などを試して頂ければと思います。

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